「半農半芸」「最強の週末農家集団」
常識にとらわれない都市農業のカタチ

Farmer's interview 001 梵菜農園 梵彩(西田 直司)さん

ファーマーズインタビュー梵彩さん

鶴見緑地公園から徒歩5分。鶴見区のシンボル、いのちの塔を望む、まさかの立地に、今回の梵彩(ぼんさい)さんのレンコン畑はあります。

様々な人が関わり支え合っている「自由な農園」梵菜農園。
レンコンの美味しさはさることながら、そのユニークな人のつながりについてご紹介します。

ファーマーズインタビュー梵彩さん

畑からは鶴見緑地の象徴「いのちの塔」がよく見えます。駅からも徒歩5分程度という想像以上の立地に梵彩さんの畑はありました。

元々はバンドマン?アーティスト?梵彩さんの多彩な背景

ファーマーズインタビュー梵彩さん

収穫体験では多くの人受け入れています。ちなみに梵彩さんのトレードマークは「赤」。

梵彩さんは1959年生まれ、今年で57歳。市内の農家としてはまだまだ現役。本人もとても明るく、エネルギーにあふれる方です。
なんといっても特徴的なのはそのヘアースタイル!
梵彩さんは鶴見でレンコンを栽培する一方で、音楽家、炭アーティストとしても活躍され、「半農半芸」を体現されています。

元々は農家出身ではなく、様々な巡り合わせの末に今の農業スタイルになったという梵彩さん。
大学時代は大阪の芸術系の学校でデザインを学ぶ傍ら、バンド活動にあけくれる学生でした。
そしてバンド活動に集中するために大学を中退。 しかしバンドだけでは生計を立てることが難しく、サラリーマンとして勤めた先で現在の奥様に出会われます。
その奥様が鶴見の代々のレンコン農家だったこともあり、その頃から少しずつレンコン栽培を手伝うようになりました。

ファーマーズインタビュー梵彩さん

インタビューさせていただいた倉庫では、各種調理器具やみんなが置いていった食料などがありいつでも宴会ができるようになっています。

半農半芸、無農薬レンコン農家の道へ

しかし、今のようにレンコン栽培を本格的に始めたのはその時から少し時間が経ってからでした。
レンコン農家の先輩たちに、1反くらいの空いている農地でレンコンつくるから手伝ってほしいと言われ、メンバーに加わることに。
実際にやってみたら1年目から大豊作でした。
そして、「売りに行ってくれ!」といわれ、当時の大阪のマルシェに売りにいったら即完売。
それが7年前のことでした。
そして続けて行った2年目も大豊作。その頃にはお客さんも少しずつ増えてきて、飲食店や八百屋、イベントなどの引き合いが多くなってきました。
お客さんが待っていては、作らないわけにはいかない、ということで本格的にレンコンを始めることになりました。

一方で、学生時代からの音楽活動、デザイナー時代に出会った炭アーティストとしての活動も継続されていました。
農業のことを突き詰めていくうちに、実はそれらの活動も農とつながっていることに気づきます。
「音楽はかつては農業と切っても切れない関係でした。田植え歌や、五穀豊穣を願ったり祝ったりする舞など。そして炭アートも、炭の環境を浄化する力があることを知り、環境という側面から農につながっています。だから、農業と芸術、どちらかを中途半端にすることはしたくないし、僕の中ではどちらも繋がっているんです。」

ファーマーズインタビュー梵彩さん

梵菜農園にきている若手農家の方から、レンコンの収穫について指導を受けました。かなり見極める目と掘るテクニックが必要で初心者には難しい作業です。

誰もやっていないことをやりたい

梵彩さんは、レンコンも農薬と化学肥料を使う慣行農法ではなく、誰もやっていない無農薬でできないか?と疑問を持ち、 少しずつ実験を重ねて、完全無農薬、有機栽培でのレンコン作りを実現してしまいました。
肥料の栄養分を分析し、それを補う有機肥料を研究したり、無農薬でどれだけの被害が出るのかも少しずつ検証し、30%は虫や鳥にやられても、70%は収穫できる方法を編み出しました。
その原動力は何かと尋ねると一言、「誰もやってないことをやりたいだけなんだよね。」と梵彩さん。
「何でも当たり前になっていることを、『なぜ?』と疑問をもって突き詰めないといけないと思っている。自分なりに実験をしてみると、1周回って昔の先輩方の知恵に驚かされることもあるが、これは省けるという部分も見えてくる。それを突き詰めることで、鶴見のレンコンではなくて、梵彩のレンコンが作れる。」、と。

梵菜農園の最強の週末農家集団

梵彩さんがユニークなのは、栽培方法や芸術活動だけではありません。梵彩さんを取り巻く人と人のつながりも実に多様なのです。
様々な分野で活動してきたからこそ、アーティスト、デザイナー、料理店、大阪市内外の農家など、分野を超えた人々が梵菜農園を出入りしています。
収穫体験イベントや、地域貢献の一環として鶴見区役所とのコラボレーションで子どもへの田んぼでどろんこ収穫体験など様々な層に向けて農地を解放しています。
バンド仲間や、体験のお客さんが、「周りにも配りたいから」と言って、たくさんのレンコンを買っていってくれることもしばしば。

そして忘れてはならないのは、梵彩さんのレンコン栽培チームは“最強の週末農家集団”でもあるのです。
マルシェで出会った若手農家や、常連のお客さんの中から、選りすぐりの約5名のメンバーがレンコン栽培や収穫に携わっています。
とはいえ、お金で雇われているのではありません。報酬は自分が収穫した量の半分のレンコン。 レンコン収穫は経験で培った勘や技術がかなり必要な作業です。さらに、収穫した量は自己申告で梵彩さんが農園にいないこともあるので、厚い信頼関係がないとこのやり方はできないとのこと。
「俺はこのレンコンでいいから、出来のいいやつは置いとくな。」という言葉が飛び交ったり、料理得意なメンバーは、昼休みの料理をしたり持ち寄ったりして、みんなで楽しく活動しています。

持って帰ったレンコンは、自分で売る人もいれば、自家用にする人も。それぞれがレンコンを広めていってくれるので、梵菜農園の名前はどんどん広がっていくことになります。そして何より、お互いが得をする関係が作られています。
「農家の中には冬の期間は手が空いてしまうことがあります。その点、レンコンの一番忙しい時期は冬。そのタイミングを見計らって収穫を手伝いに来てくれているんです。彼らにとって自分たちの商品として売れます。逆に僕は夏の期間に彼らの農園に手伝いに行くこともあります。お互いに支え合って農業をしているからこそ、頼もしいですし何より楽しいんですね。人との付き合いなので、上手くいかなくて凹むときもありますが、そんな時も仲間が支えてくれて乗り切ることができました。」

梵菜農園のこれから

梵彩さんにこれからやっていきたいことについて聞いてみました。
「今年は5つの実現したい目標を掲げています。
・こどもたちの童農園
・レンコンの6次化商品の開発
・レンコン600坪栽培
・体験イベントを増やす
・仲間たちと慰安旅行
ですね。
とにかく、オープンで自由で、“おばか”な農園にしたいんですね。そのために子どもたちへの農園の解放や体験イベントをもっと突き詰めます。
レンコンの出口ももっと自由にしていきたい。例えば、今年は地元の商業高校と連携して、レンコン石鹸などを作りましたし、これからレンコンアクセサリーなども作っていきたいと思っています。
そして何より、仲間たちとの慰安旅行。これを実現するためには、技術的にも経済的にも、もっと“最強”な週末農家集団にならないといけません。2反ほどレンコン畑も増やしますし、技術面や売り方についても今いるメンバーと高めあっていきたいですね。」

様々な人のつながりの中で、楽しくて自由な都市農業を実現している梵彩さん。
参加している方もとてな素敵な方ばかりが集まっていて、それもこれも梵彩さんの人柄がなせる技なんだと感じた取材でした。

ファーマーズインタビュー梵彩さん

鶴見のレンコンは固い粘土を独特な農具を使って掘削していくように穴を掘って収穫します。

梵彩

farmer’s profile

梵彩(西田 直司)さん

鶴見緑地のいのちの塔を望む畑にて、河内レンコンを栽培。粘度の高い土で育てられたレンコンはもちもちで大好評なため入手困難。バンドマン(パートはパーカッション)としての顔、炭アーティストとしての顔など、農と食とアートの分野で活動中。

2016.3.28
report : yasutaka kaneda(NPO Co.to.hana)

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