柏原をワインで元気にした
高井利洋さんの「農のカタチ」

(農業者セミナー2015 「農のカタチ」カフェ 2015.2.21)

高井利洋の農のカタチ

新しい農業のモデルを実践しているトップランナーを招き、その取組のお話からヒントをいただきながら、大阪市内農業のこれからについて考える「農のカタチ」カフェ。
今回は大阪市内の農家など約20名が集まり、「カタシモワインフーズ」の高井利洋さんと一緒に、これからの大阪の農のカタチを考えました。高井さんは、ワインづくりを通して柏原のまちを元気にする取組を実践しているとのこと。ワインでどうやってまちを元気にしていったのか、お話を伺いました。

高井利洋の農のカタチ

大阪市からも近い柏原氏でぶどう栽培とワインづくりを営む高井さん。

生まれ育った柏原のまちの
風土や風景を守り繋いでいく

高井さん: まず、どこの地域でもそうだと思いますが、農家の高齢化が顕著ですね。柏原ももちろん高齢化が進んでおり、僕はもう60歳を超えているが、この辺りで一番若手なんじゃないかな。
さらに柏原の土地は農業を営むのが大変なんです。ひとつは税金が高めなこと、もうひとつは斜面が多くて重労働なんですね。かなり頑張らないと採算が合いません。
そんな中で、畑や趣のある昔の家屋がどんどんマンションになっていく。我々はそれに抵抗しています。自分が生まれ育った、素晴らしい風土や風景を守りたいんです。
柏原のワインは戦前からの歴史があります。山梨のブドウを大阪でも栽培しようと、たくさんの人の知恵や努力があり大阪での栽培方法を確立してきました。そしてその知恵を個人が独占せず、地域全体で共有することで、ブドウで儲ける方法が地域に一気に広がり、一時大阪は山梨を超えるブドウの生産地にまでなりました。大阪は、神戸や京都にも近く、消費者が近いことも追い風となりました。大阪のブドウは、山梨に比べて小ぶりですが色と味が濃く、よく売れたと聞きます。
実は、大阪ではじめてブドウ栽培を成功させたのがカタシモワイナリーの初代。私はその4代目です。私はサラリーマンでしたが、父から「お前が継ぐか、畑をマンションにするか」と問われ農園を継ぐことを決意しました。そこで諦めると、自分の誇りが全て失われる気がしました。
自分が継いでからは、試行錯誤の連続でした。当時、日本のワインは価値があると思われてなかったので、それを変えてやろうと思いました。それで最初は東京の百貨店に新商品を出したのですが、3ヶ月後には半分以上返品され大赤字になってしまいました。その時に気付いたのは、地元でしっかりやらなければいけないということ。東京に売りにいくのではなくて、大阪に買いに来てもらう。そうすることが柏原のまちにとっても良いことだと考えました。

高井利洋の農のカタチ

参加者には、現役の市内農家から食や農に関心のある様々な世代の方がご参加いただきました。

1日1日の縁がつながり今の商売がある

そこで私は柏原にお客さんを招き、街歩きと工場見学やワイン試飲を組み合わせたツアーを始めました。ぶどうはもちろん、自分たちのまちの畑や古民家、ワイン工場はすべて財産。最初は赤字だったけど、どんどん人の繋がりが増えていき、ワインを買ってくれるお客さんが増えてきた。
ツアーなどに参加してくれたお客さんは、そのあともワインを買ってくれたり友達に紹介してくれたりします。自分たちが商売をやっていけているのは、そういう1日1日の縁のおかげと実感しています。
私は地域の栽培放棄された畑を引き取り、自社でもう一度ぶどう畑として復活させる取組をしています。それは自社のスタッフだけでは不可能で、460人を超える様々な地域から来るボランティアの方々の協力があって、はじめて出来ています。それも様々な縁が繋がっているからこそだと思います。

高井利洋の農のカタチ

高井さんの資源を最大限生かす発想から生まれた「グラッパ」。

さらに、もっと大阪へ、もっと柏原へ来てもらうために、「たこシャン」というたこ焼きに合うスパクーリングワインをつくりました。原材料として、ワインには風味が合わないので普通はあまり使わないデラウェアという品種を使っています。これをなんでつくっているかというと、柏原で栽培放棄される畑のほとんどはデラウェアを育てているから。これを儲かるものにしないと、まちを根本的に元気にすることにはならないと考えました。そうやって生まれたのがたこシャン。大阪人は“おもろくて”、“ほんまもん”じゃないと買わないからシビアだけど、人工の炭酸を使わない本格的な瓶内発酵や、たこ焼きと合うというユニークさを受けいれてもらえたのかなと思います。

高井利洋の農のカタチ

高井さんのお話のあとは、参加者同士で感想や学びのシェアをおこないました。

こうやって自分の地域を守ろうとするのは、やはり自分たちの商売を守るため。これからは多くの人が手を組んで、他の地域と戦っていきたいし、それが農業を元気にしていくと思っています。 

高井利洋の農のカタチ

それぞれが抱える課題を話し合い、高井さんの話から得られたヒントとこれから取り組んでいきたいことについて意見が飛び交いました。

高井利洋の農のカタチ

参加者の一人、市内農家の西野さんが菊名をもってきていただきました。高井さんのワインと一緒に試食。

高井さんが実践してきた農のカタチ

高井さんの代表的な取り組みについて紹介します。

「たこシャン」
ドンペリニヨンと同じ瓶内発酵製法によってつくられるスパークリングワイン。
デラウェアというブドウはワインに向かず、柏原で多く作られているもののあまり売れなかった。たこシャンが有名になったことによって、柏原のブドウ農家を救う一手となった渾身の一本。

高井利洋の農のカタチ


「グラッパ 」
ブドウの搾りかすを使用して作ったグラッパ(ブランデー)。
搾りかすは、従来は畑の堆肥として使用していたが、酸性が強くあまり良い肥料とは言えずお荷物状態だった。30万円の価値しかいない肥料から、3000万円の価値を生む商品に変えた。

高井利洋の農のカタチ


「ぶどう畑レストラン」
ブドウが生い茂り、涼しい風の抜けるブドウ棚の下をテラスにして、地元のフレンチレストランなどを呼びレストランを開き、ワインとブドウ畑の素晴らしい環境を同時に味わうことができるイベントを開催している。

高井利洋の農のカタチ


「街並みと農園観光ツアー」
歴史を感じる古民家とブドウ畑が点々と残る街並みを散策し、ワイン工場の見学や、テイスティングルームでのワインの試飲ができるツアーを定期的に開催している。ワインを楽しむだけではなく、柏原の街の魅力を高井社長の熱い解説付きで知ることができる。

高井利洋の農のカタチ

高井 利洋

guest’s profile

高井 利洋さん

カタシモワインフーズ社長
http://www.kashiwara-wine.com/
1951年、大阪府柏原市に生まれる。 大阪で初めてワイン用ブドウで大阪府エコ農産物栽培ほ場に認定され、日本で始めてグラッパを製造する等、革新的な事象に積極的に取り組む。「地域に寄り添い地域と共に歩むワイナリー」を目指して活動し、様々な賞を受賞。大阪府の「食の安全安心」にも認証され、2012年には大阪ワイナリー協会会長に就任。130年続くブドウ畑を次の100年に繋げるため、積極的に活動中。

2015.2.21
from "Osaka City Farmers Report 2015"

「農」を通して子どもたちの「心」を育む

一覧へ戻る

広がる都市農業の新しい “ウリ”

Top