変わらないものと変わるもの

(なにわの農業塾2016 第6回「農業経営集団 コンサルティング」 2016.3.15)

農業経営集団 コンサルティング

2016年のなにわの農業塾もついに最終回を迎えました。
これまで5回に渡って、東西各地から様々な切り口から都市農業に取り組む専門家をお招きし、「儲かる」大阪市内農業の可能性を探ってきました。
テーマとしては、「直販開拓」「担い手育成」「体験農園の魅力と運営」「小規模高収益な都市農業」「農業者ネットワークの可能性」の5つ。五人五様のお話をいただきましたが、いずれのお話も根底には都市農業の問題意識がありました。

締めくくりでもある今回は、それらの学びを統括しつつ、参加した農家の皆さんそれぞれに今後の大阪市農業の未来、そしてそれぞれの農業経営について考える機会となりました。

農業経営集団 コンサルティング

最終回は、髙橋さんのサポートの元、全員でお互いの農業観について共有していきました。

未来に向け、自分がどう変わっていきたいか

講師は第一回目と同じ、株式会社農業サポートセンターの髙橋 太一郎さん。今年の農業塾では最初と最後を務めていただきました。
髙橋さんは、近畿圏内の様々な農家さんの経営支援の活動を行っています。
ご自身の仕事で得られた経験から、農業経営をしていくために必ず必要になってくる経営戦略のポイントについてレクチャーしていただきました。

これは農業経営に限らずですが、事業を行うときには「事業計画」が必要です。未来も続く事業をつくるためにも、将来を見据え、いかに稼ぎ成長していくのか、早い段階から考えておくことが重要です。
では「事業計画」とは一体何なんでしょうか。
「一言で言うと、自分がどう変わっていくか?を考えるということですね。」と髙橋さんは言います。
「今自分が置かれている現状と、課題を理解することが大切です。もっと言うと、農業をする上で変えてはいけないことと、変わっていくことがあると思います。自分の信念や農業に対する想いは変えてはいけない部分。変わっていくのは、社会の情勢や環境といったことです。重要なのは、そういった環境の変化に対して、『では自分は何を変えていくのか』ということです。」

髙橋さんが講師を務める近畿大学農学部の講座では、親戚に農業者がいる生徒は約2割程度です。しかし10年前はおそらく4割程度はいたとのこと。では次の10年はどうなるでしょうか?親から引き継いで就農する人よりも、全く新しく新規就農する人が大多数になっていくかもしれません。
自分の農業だけではなく、少し広い視野を持って社会を見渡してみることも、事業計画を立てるには必要です。

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世代を超えて、お互い刺激を受けながら食文化、農業のあるべき姿を探ります。

10年後の食や農はどう変わっているのか?

ここで参加者の方と一緒に、「10年間で変わった食の状況」について考えてみました。 皆さんもちろん食については日々考えていらっしゃることなので、議論も大変盛り上がりました。
少し皆さんの意見も紹介します。

・消費者の動向が2極化してきたのではないか。品質や鮮度は多少悪くても安いものを選ぶ層と、高いお金を出してでも安心安全の食材を選ぶ層が極端に分かれている。
・家族などの団体での食事の機会が減り、個人で食べる機会が増えた。
・農家の想いは何年たっても代わることはない、変わっていくのは消費の形。安心安全などに対して非常に厳しくなってきている。
・昔は輸入品の食材ばかり食べていた記憶がある。でも今は食意識が高まり、とても国内産の食材に触れる機会が増えた。
などなどと様々な意見が出ました。
髙橋さんからも、企業の大規模農業参入や、中食(惣菜やコンビニ弁当など、持ち帰ってすぐ食べられる食品)の増加、外食や生鮮の売り上げ減なども重要なポイントとして紹介されました。スーパーの売り場は、その時代の食文化を如実に表す一つの指標と言えます。

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髙橋さんに紹介いただいた和歌山の農家さんの事例パンフレット。想いを伝えるコツが詰め込まれています。

それを踏まえて、「次の10年で食がどう変わっていくのか?」についても考えました。

・生産や食事はどんどん効率化されていく。ネットスーパーや大規模ロボット栽培などが台頭してくるのではないか。
・効率化の反動として、『みんなで食卓を囲みたい』という消費者意識も顕著になっていく。
・農地もどんどん法人が取得していくだろう。
などの意見が挙がりました。共有しているのは食や農は効率化、合理化されていくということ。最近の新築の家ではキッチンがそもそもないこともあるそう。社会全体が効率化に向かって突き進んでいることは間違いなさそうです。

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課題意識や、これから10年で市内農家がしないといけないこと、皆さんほとんど共通でした。

変わらないものと変わるものを見定める

社会の変化は、ミクロに見ていくと一人一人の消費者、お客様の選択の積み重ねの結果です。
参加していた農家の皆さまで共有していたのは、美味しく、楽しい豊かな食文化を未来も守っていきたい、それを少しでも消費者に選んでもらいたいという点でした。
そのためのアクションとして、安心安全な野菜作りを追求する人、加工品を通してより多くのお客様に美味しい食を届けたい人、市内の農家同士の世代を超えた連携をもっと深めたい人、子どもたちへの教育の場を作りたい人、野菜の新しい販売の形をつくたい人など様々でした。

農業経営集団 コンサルティング

これまでの学びを振り返りながら、この農業塾の後にどんなアクションを起こしたらいいのかを考えます。

市内農家の多くは個人経営の小さな農家です。しかし、だからこそ食文化を守りたいという想いは一層強く、社会が効率化していこうとも、自分たちは野菜作りを通して社会を良くしていきたいと、皆さん口を揃えていました。

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みなさん一人ずつに決意表明をしていただきました。「10年後」は自分の体力も含めて色々と考えてしまう時間。

2016年のなにわの農業塾は、皆さんの決意表明をいただいて閉会となりました。
3か月に渡って学んできた知見、築いてきたネットワーク、そしてみんなで共有した熱い想いを、次なる農業経営に皆さんが活かしていってくれることを期待しています。行政、民間企業、そして消費者も農家と一緒になって大阪市の農業や食文化を盛り上げていきましょう。

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若手の農家さんからは、先輩の想いや知見を引き継ぎ、新たな農のカタチを模索するとお話いただけました。

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農業塾最後は、みなさんから熱い想いを伺うことができ、未来につながる予感を感じることができました。

髙橋 太一郎

guest’s profile

髙橋 太一郎 さん

株式会社農業サポートセンター 代表取締役
http://nousapo.co.jp
農業の現場を知る中小企業診断士として、農業経営コンサルタント業を行う。経済産業省や農林水産省に関する公的支援、6次産業化プランナーなどに就任し、主に近畿圏内で農業者、事業者の支援を行う。

2016.3.23
report : yasutaka kaneda(NPO Co.to.hana)
photo : Shibata yosuke(NPO Co.to.hana)

東京流「つながり」で活きる都市農業

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